外務省の令和6年(2024年)10月1日現在の海外在留邦人数調査統計によると長期滞在者(海外勤務者)は71万2,713人です。
給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。
非居住者の場合、日本で課税を受けるのは国内源泉所得のみとされています。
給与所得者が海外勤務中であれば、一般的には恒久的施設を有しない非居住者に該当します。
恒久的施設を有しない非居住者が株式等を譲渡した場合、次の1から6のいずれかに該当する所得が申告対象の国内源泉所得として課税対象となります。
1 買集めによる株式等の譲渡による所得
2 事業譲渡類似株式等の譲渡による所得
3 税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡の所得
4 不動産関連法人の一定の株式の譲渡による所得
5 日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得
6 日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得
1と2と4は特殊なケースと考えられますが、3と5と6は実際に身近に起こりそうな譲渡ではないでしょうか。
1から5に該当するものについては、「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分し、他の所得の金額と区分して税金を計算する申告分離課税となり、6に該当するものについては総合課税の対象となります。
これらに該当する場合は確定申告が必要です。
租税条約は関連国内法規に優先してその効力を有すると理解されています。
そのため、海外勤務者が居住する国と日本国との間に租税条約(協定)があれば、それに従うことになります。
たとえば、香港居住者の普通の株式譲渡(不動産関連や事業譲渡類似を除く)は、日・香租税協定により日本国内では課税されません。シンガポールの場合も然りです。
一方、租税条約が結ばれていなかったり、モナコなどのように執行共助条約のみしか結ばれていなかったりの場合は、所得税法の原則通り日本で課税されます。